株式会社TSUGIの新山さんの基調講演、上甑島・屋久島・中之島(3島)の地域おこし団体からの事例発表が終わり、最後は、参加者全員で課題解決のためのグループトークを実施しました。島と一括りに行っても大小様々な課題や背景の違う鹿児島の離島。現在、それぞれの参加者が感じている課題感や解決に向けた初めの一歩について、数名ずつのグループに分かれリアル会場と、オンライン会場のハイブリッド型で話し合いが行われました。
【皆さんに考えていただいた2つのテーマ】
1 島で抱えている課題の共有
2 課題解決に向けた初めの一歩として何ができるか
・離島や離島コミュニティとの接点
・移住者と住民との考え方の温度感
・価値観の違いによる人間関係
・島に来てくれる人をどう見つけるか
・住居問題(コスト面や空き家問題)
・教育と女性の社会進出
・地元の資源の活用
・後継者不足、新規就業者不足
・地域をどう巻き込むか
・連携不足
・事業の持続性
・高齢化と人材不足
・新型コロナウイルスのよる観光への打撃
課題解決のためのグループトークでは、オンライン会場・オフライン会場を合わせ多くの課題点や意見が出てきました。上記のような様々な意見がありましたが、今回は大きく4つに課題点をカテゴライズし、課題解決に向けて「最初の一歩」として何ができそうか再度各グループで話し合いをして頂きました。
【再度話し合って頂いた課題点はこちら】
A 住居問題
B 子供の教育とキャリア
C 人材不足
D 離島との接点の持ち方
A 住居問題のSWOT分析
【強み】
・離島には大自然がある
・水産資源や農作物などの食材が豊富にある
【弱み】
・空き家が多いが、住める状態の空き家がとても少ない。
文化的背景)島を捨てた人間として見られるために、家の売買や賃貸までの行動心理的に難しい問題もある。
環境的背景)シロアリの被害がひどく、空き家の管理状況がよくないとすぐに朽ちてしまう。
物理的背景)島外から建材を仕入れるために建物への補修などがコスト高。
【脅威】
・日本中の地方自治体が移住政策として空き家の利活用を行っている。
・鹿児島離島に住む上で家(空き家など)と仕事の情報が一元化されていない。
・役場の財政が厳しいために、住環境に対する補助が出せない。
・役場の予算比重が観光政策>移住政策
【機会】
・観光客を呼べるブランド(屋久島、種子島、奄美、徳之島など)
・空き家の状態から間取りや場所など通して事業を考える事ができれば、例えば、空き家を飲食店や宿泊施設にリノベーションするなど活用の出口などはある。
・離島のまちづくりファンドを作り、空き家の利活用の予算に回す
・補助金の制度はあっても、使い方が分からない住民は大多数なので、どうすれば使えるのかを教える機会を
作ると利活用が進む
・空き家バンクの空き家情報の記事をより読者が閲覧しやすいような記事の作り方に変えることで、移住希望者
とマッチングする可能性がある→鹿児島県伊佐市の取り組みを参考
・離島に住む上での虎の巻的なものがあるといい→県内のデザイナーなどとの取り組めそう
B 子供の教育とキャリアのSWOT分析
【強み】
・時代的に「あるものをどういかすか」の時代なので、島の教育環境の特徴である複式学級や離島として様々な
社会課題がフィールドとして山積しているので教育面で逆にチャンスでもある
・生徒数が少ないので、教師が子供の目の届く範囲にいる
【弱み】
・部活動の多様性がなく、教える先生も少ないので団体競技が少ない傾向
・結果として子育て世代が移住先として選択肢に上がらない
・転勤族の旦那さんを持つ女性は仕事を辞める必要がある。
→人脈作り、キャリア形成を離島では困難
【脅威】
・外からのイメージと実際の状況のギャップがある。
→島の人々はお互いとても仲が良さそうに見えるが、文化的背景や社会的背景から実際はしがらみが多い
【機会】
・スポーツ振興の補助(合宿の際の交通費の補助など)の制度がある
C 人材不足のSWOT分析
【強み】
・耕作放棄地の活用がしやすい
(これは本当なのか?農業委員会などの許可などは島々で状況が違う)
【弱み】
・加工場がない。
・体力がいる仕事が多い。
・島と役場それぞれで商品開発をしていて、連携が取れてない。
・高校がないので、島に戻るという意識がない。
・外部の人間を呼び込むような空気感がない。
【脅威】
・商品開発は別の事業の片手間にやっている。
・事業の収益性がどんどん少なくなっている。
【機会】
・事業者は短期インターンを活用して若い人材との接点を作ることが重要になりそう。
・大学生などの若い世代はきっかけを求めている。
D 離島との接点の持ち方のSWOT分析
【強み】
・食材が豊富なので、食材を通じて接点を作れる
・島への憧れというイメージ(海を越えないといけないというワクワク感)
【弱み】
・離島との接点の持てるイベントを行政主体で行っているが、それを何の目的で何回開催し、目的をどう達成し
たのかを数字で検証しているのか分からない。結果として、接する機会が全然ないなどの意見が出てくる。
・婚活パーティに鹿児島本土で参加しても、相手の移住ハードルが高い。
・宿、カフェ、地域ブランドなどのまとまったものがない。
・家、仕事、街の情報などの暮らす上での情報量が少ない。
【脅威】
・島の中の場作りの難しさ、島内の温度感(どんな風に場作りをしているのかが大事)
・誇りを持っているからこそ、新しさや外からのものを受け入れるのかが難しいという島民性
・物理的な距離、交通格差
【機会】
・島外の人の方が島の新しい魅力を知っている可能性がある。
・オンラインの活用
・離島イベントを鹿児島本土で行うことで、鹿児島離島のことを友人に勧めたりすることに繋がる
・離島と関係を持ちたい一定の層は存在する
・伝え方の設計次第で伝わる可能性
以上のような課題の抽出と、併せて「何かできることがあるかも知れない」そんな、最初の一歩を感じるような時間になりました。今回は、時間の都合もあり、出てきた全ての課題点について十分な時間を取って話し合う時間を設けることができませんでしたが、このセイルミーティングをきっかけに浮き彫りになった課題について、今後も議論を深め、さらに価値に変えていく取り組みに変えていこうと思っています。
参加者の声をご紹介(一部のみ掲載しています)
【新山さんの講演】
‘‘離島にも持ち込めるアイディア、デザインがたくさんあった。非常に参考になった’’
‘‘自分で考えて、行動できる。自分の言葉で伝える。何をするにしても、「自分」次第だということがとてもわかりやすく伝わるお話でした。また、全国的にも注目される事業も取り組みもイベントも、最初は小さなことから始まっていて。成功ばかりではなかった。というところも、印象的でした。鯖江に行ってみたくなりました!!!’’
‘‘作りたい地域を自分たちで作っていこう、というのを実行されていた。語られていない背景はと
んでもなく深いと思いますが、離島および似た地域にとって希望となるお話でした。’’
【事例発表】
‘‘自分の島の規模では、何か新しい事を始めるにしても地元住民との関わりは必須なので、地元の人との関わり方をもう少し聞いてみたかった’’
‘‘みなさんそれぞれあるものへの工夫がこらされていたり、マイナスをプラスに変えてる事例を聞けて、モチベーションが上がった’’
【課題解決のためのグループトーク】
‘‘まだまだお話ししたかった、聞きたかった!ですが、短時間でもいくつか収穫があり、沢山の声をまだまだ聞いてみたいと思いました’’
‘‘セッション時間は短かかったですが、逆に話し足りなくて次につながりやすくて良かったと思います。そもそもこの場だけで解決できる事は無いので、改めてリアルな課題を行政の方とも共有できた事に価値があると思いました’’
【全体を通しての感想】
‘‘島との接点がもてたいい日でした。ここから小さくても何かできることがあるといいかなと感じています’’
‘‘離島への熱量を持っている方の生の声を伺える貴重な機会でした’’
‘‘離島だけでなく日本各地の同じ課題を抱えた地域にも応用できる学びがありました’’
これからのRITOLAB
今年のリトラボは、まだまだ続いていきます。そして、鹿児島離島のもの・ことづくりを通じて新たな価値をつくる・伝えるプロジェクトに併走しながら広げていく挑戦としてDESIGN TUGという離島の地域おこし団体と鹿児島県在住のクリエイターをマッチングしながら、離島の課題と挑戦に併走していくサポートを行なっていきます。
また、「鹿児島離島のブランド化」への取り組み・連携を強化していく中で、2021年12月〜2022年2月にかけて開催予定の&islandにおいても、離島産品の展示・新商品の販売促進などの取り組みも予定していますので、これからのリトラボの取り組み楽しみにしていてくださいね。